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飯村くんのロンドン便り

【同級生の近況】掲載:平成18年1月22日〜2月18日

                          

<第5回(平成18年2月18日)>

前回の続きで今回は「地下鉄」についてご紹介します。


【ロンドンの交通(2)】


『地下鉄』----- 地下鉄の原点はロンドンにあります。それは世界初の地下鉄だからです。ロンドンでは地下鉄というより「チューブ」と呼ぶ方が一般的で、これはその筒状のトンネルに由来しています。経費節減の目的もあったようですが、列車もそのトンネルに合わせて断面は丸くなっています。日本の地下鉄よりも大分小さめで現在12路線が縦横に走っており、旅行者はもちろんロンドナー達にとっての重要な足となっています。駅名も「Bank」や「Temple」、さらには「Angel」といったユニークなものもあります。わかりやすいと言えばわかりやすい駅名ですが、普通名詞がそのまま駅名とは本当におもしろいですよね。そして世界に先駆けてこのようなシステムを創り上げたことは本当にすばらしいことだと思います。

しかし残念ながら現状では「古く汚くいいかげん」という形容がぴったりの、もしかすると先進諸国の中では最低レベルの地下鉄になってしまっているかもしれません。

「古く」に関しては車両がいつ製造されたのかと思える程古いものもあり、座席のシートがほころびているのは当たり前、時には変な金属音がし、雨漏りも日常茶飯事です。ロンドンの地下鉄も郊外では地上に上がるので天候の影響をまともに受けます。また冷房がないので夏は蒸し風呂状態になります。駅には脱水症状を防ぐためペットボトルの携帯を勧める広告が貼られます。駅の設備も古いものが多く、エスカレーターやエレベーターの故障もしょっちゅうあり、また大雨にも弱く洪水で駅が閉鎖になることもあります。さらに駅を丸ごと修復するということで何ヶ月も駅が閉鎖されることもあります。

「汚い」については以前にも記しましたが、とにかく英国人はどこでも平気でゴミを捨てますので車内はすぐにゴミ箱と化してしまいます。また駅には平日の朝「
Metro」という無料のタブロイド版の新聞が置いてあり、(これはこれでありがたいのですが)これが大きなゴミの原因となります。もっとも同僚によると車内に放置するのは他の乗客も読めるようにという意味もあるとのこと。実際こちらの乗客の多くは本や新聞を読んでおり、日本のように寝ている乗客はほとんどいません。また汚いという点では駅舎も同様です。いつも駅員がマジックハンドのようなものでそんなゴミを拾い集めている光景を見かけます。また空気が悪いのも大きな問題です。開通当初は蒸気機関車が中を走っており、いまだ当時の煙の煤がトンネル内に付着しています。お陰で鼻の中が真っ黒になります。アスベストが含まれてないことを祈るだけです。


「いいかげん」に関してはそのものずばりです。運行遅延、運行停止、駅閉鎖などのトラブルは日常茶飯事で、いちいち書いていたら一冊の本になってしまいます。週数回のトラブルは覚悟しておかなければなりません。

ただ折角の機会ですからいくつか「思い出に残る」トラブルを紹介します。


私はロンドンを東西に横断する最も古い路線のひとつである「セントラルライン」で通勤しています。古さから言えば「銀座線」、路線配置からすれば「東西線」のようなものです。そして出勤初日から悪名高きチューブの洗礼にあってしまいました。通常片道
1時間弱の通勤時間ですが、その時は途中の駅で突然降ろされ、やっと来た次の列車では駅と駅の間で40分以上閉じ込められ結局2時間以上もかかってしまいました。もちろんこれがプロローグだとはその時には気付いてもいませんでした。


またこの線は
2003年の1月に脱線事故がありその後三ヶ月半も運行が停止されました。不幸中の幸いでこの事故で亡くなった乗客はいませんでしたし、事故の規模もそれ程大きなものではありませんでした。しかし全車両の安全確認ということもありこんなにも長い間運行が停止されました。当局からは24時間体制で復旧にあたっているというメッセージが度々出されましたが同僚の多くは懐疑的でした。もし東京で銀座線が三ヶ月半もストップしたらどうなるでしょうか? そしてこの間は遠回りになる別のルート「ピカデリーライン」を使わざるを得ませんでした。しかし多くの通勤客がそうしたためその混雑はひどいものがありました。数本見送った後やっと乗れた車内で近くにいた(たぶん)英国人がつぶやきました。「まるで東京のようだ。」 思わず苦笑いをしてしまいました。

また「サークルライン」に乗った時のことです。この線は山手線のような環状線ですが多くの区間他の線と平行して走ります。パディントン駅を過ぎた後で乗客の何人かが慌てて路線図を見始めました。何か変だと思ったら、いつの間にか「ハマースミスアンドシティライン」に入っていたのです。私はロンドンの地下鉄に乗る時はいつも「ホームの電光掲示板」と「先頭車両の表示」の両方を確認するようにしています。その時ももちろん確認しました。しかし突然別のラインに変わったのです。山手線が突然京浜東北線に変わったようなものです。遠回りですがその線でもよかったので終着のハマースミス駅まで行き、念のため再度表示を見てみました。やはり「サークルライン」と表示されていました。

こんなことが日常茶飯事で起こります。また英国はいまだにストライキの多い国でロンドンの地下鉄でも年数回はストがあります。スト当日の交通事情はただただすさまじい状況です。私も一度バスを乗り継いで出勤しましたが、片道
3時間半もかかってしまいました。それに懲りて今では有給休暇を取るか週末と振り返ることにしています。ただこのような数々のトラブルのお陰で、どの駅で降ろされたら別のどの地下鉄が使えるか、バスは何番が使えるかといったことを学ぶことができました。なお今では帰宅前には必ずロンドン地下鉄のWebサイト(http://www.tfl.gov.uk/tube/)を見るようにしています。現状がわかるからです。そこでは運行状態が「Good service」「Minor delays」「Severe delays」「Suspended / Part suspended」の4段階で表示されています。なぜ通常運行なのに「Good」が付くのかわかりませんが、「Severe delays」の時には初めから別ルートを使った方が賢明です。また遅れなどがあった場合にはその理由が記載されています。一番多いのは「信号故障」、続いて「車両故障」や「人身事故」でこれらはある程度は仕方ない理由ですが、中には「運転手不足」や「スタッフ不足」といった理由?まで堂々と掲載されています。また全ての線でGood service」が丸一日続くことはまずありません。お暇な時がありましたらぜひ一度上記Webにアクセスしてみてください。


地下鉄に限ったことではありませんが海外に住んで強く思うことのひとつは、何事も「日本が世界標準ではない」ということです。

ただこのように日々苦しめられているロンドンの地下鉄ですが、帰国したら帰国したでたぶん懐かしく思い出されるんだろうなと思う今日この頃です。

―――ちょっと横道に―――

同僚のほとんどが日本に初めて出張して驚くことのひとつに、日本の鉄道システムのすばらしさがあります。どうして時刻表が分刻みで表示されており、しかもその時刻通りに列車が来るのか? どうして新幹線のような超高速列車が正確なだけでなくあんなに静かできれいなのか? 等々。ロンドンの地下鉄駅の時刻表には始発と終電の時刻しか記載されていません。後は5-6分毎というような曖昧な記載です。しかも「Good service」にも拘らず同じ時刻に駅に着いても日によって待ち時間が違うこともしばしばです。

また英国には日本の
JRにあたるBA(British railway)という鉄道網がありますが、これもロンドンの地下鉄と同様な現状です。遅れはある意味当たり前で、例えば地方の駅で乗り継ぐ場合、30分ぐらいの(時刻表での)差では乗り継げない可能性が極めて高いことを覚悟しなければなりません。


昨年日本であった福知山線のような事故はこの国では考えられません。

そしてもう一つ驚くことは列車から見える看板の多さです。英国では極めて僅かです。この点では英国を見習ってもらいたいものですね。