ロンドン在住の飯村洋一くん(39組)のロンドン便り第3回です。

ロンドン便り(3)

いよいよ同窓会まで一ヶ月を切りましたね。幹事の皆さん、風邪など引かずにラストスパート頑張ってください。何のお手伝いもできずに恐縮ですが第3報をお届けします。


【ロンドンの衣・食・住】

『衣』----- 一言で言うとこちらの人のファッションは「地味で他人の眼を気にしない」と言えると思います。例えばシティと呼ばれる金融街に勤めるホワイトカラーの人達は男性も女性もスーツ姿が多いようですが、フランス人やイタリア人に比べてずっと地味と言われています。一方でいたるところでペンキの付いた服のまま地下鉄やバスに乗り込んでくる労働者もよく見かけます。また真夏なのにジャンバーをしっかり着込んだり、真冬なのにTシャツで歩いている人もいます。日本に比べて他人の眼を気にせず我が道を行くタイプの人が多いようです。

それからロンドンと言うと「バーバリー」や「アクアスキュータム」といったブランドを想像する方も多いと思いますが、やはり日本人の体形にあった服、特に長袖のものを探すのは必ずしも容易ではありません。一般的に長過ぎます。もっとも日系の店では短めの商品も扱っています。ただ安さから言えば英国でもアウトレットが一番でしょう。うまくいけば信じられないぐらい安いブランド品をゲットできるようです。


―――ちょっと横道に―――

こちらでもカジュアルファッションの代表は老若男女共にジーンズです。そして夏になると、最近は日本でも多いようですが、短めのTシャツなどと組み合わせた「へそだし」ファッションの女性が多くなります。ただ驚くべきことにこちらでは妊婦さんまでもが「へそだし」です。腹帯を巻く慣習がある日本とは大きな違いです。遺伝的なものに加えてこちらでは胎児の時から鍛えられているわけですから体感気温が違っても納得ですね。


『食』----- 一般的に「英国の食事はまずい」と言われています。確かに「フィッシュ&チップス」などの典型的な英国料理は脂っこい料理が多いですし、付け合せの野菜も茹ですぎがほとんどです。また味付けも日本に比べて塩辛いものが多いうえに量が多いのも特徴です。でもそれらもおいしいところで食べればおいしい訳で、毎日食べたいとは思いませんが、単においしい店が少なかっただけではないでしょうか。もっともこういった風潮はだいぶ変わって来ています。少なくともロンドンでは(東京と同じように)世界各国の味を楽しむことができますし、(値段のことを考えなければ)かなりおいしい料理を味わうことができます。

一方で最近の健康志向はすごいものがあります。英国人は一昔前まではあまり生野菜を食べなかったようですが、現在ではどこのスーパーでも生野菜サラダを買うことができますし、もちろん有機野菜も人気です。

そして何と言っても健康食の代表?と言えば「日本食」があげられます。現在ロンドンには約120件もの日本食系レストランがあるということですが、例えば職場近くの日本食屋の場合8-9割は西洋人の客です。またロンドン近郊に10件以上の支店を構える「ワガママ」というチェーン店は、純粋な日本食店ではありませんが、昨年ある雑誌の人気投票で一位に選ばれました。また最近ではほとんどのスーパーでも寿司を置くようになりましたし、日本食(もどき?)の持ち帰り専用店も数を増やしています。もはやロンドンでは日本食はりっぱな市民権を得ています。ただ「日本食なら何でも健康食で多少多く食べても大丈夫」と短絡的に考えている英国人も少なくないようなのでちょっと心配です。


―――ちょっと横道に―――

同僚のひとりにイスラム教徒がいます。彼は味噌汁のファンで、ある時インスタント味噌汁を買って来てほしいと頼まれました。そこで(もちろん日本製の)味噌ペーストから作るタイプのものを調達しました。しばらくして味はどうだったかを尋ねると、「おいしかったけれどもう飲めない」と言うことでした。理由を聞くと「酒が入っているから」とのこと、パッケージを良く見ると確かに英語の内容物一覧シールに「sake」と書いてあります。彼は日本語会話を習っているのでそれがアルコールだと言う事を知っていました。たぶんペースト状態を良好に保つ目的でごく少量の酒が含まれているようです。日本人には想像すらできないことですが、いくら微量でもイスラム教徒にとっては重大な問題です。その日の帰りにもう一度日本食材店に寄り、顆粒状のものなら酒が入っていないことを確認し彼に渡しました。もちろん彼は今でも味噌汁のファンです。


『住』----- 英国の住居は「デタッチド」(1軒家)、「セミデタッチド」(2軒繋がった家)、「テラスハウス」(4-5軒繋がった家)、「フラット」(アパート)の大きく4種類に分類されます。そしてイングリッシュガーデンではありませんがやはり庭付きの家が人気です。また古い家が多いことも特徴で、我が家でも(もちろん借家ですが)築80年以上とのこと。しかしこれはまだ新しい方で、築100年以上はざら、中には築200年以上の家に住んでいる人もいます。ただしこれらは外装の話で内装は違います。新築する場合でも外側のレンガはわざと古い家のものを使ったり、新しいレンガを使う場合でも古そうに見える物を選んだりするようです。また暖炉も無いのに煙突を付けることも普通のようです。内装は好みによって、さらにオーナーの国籍によっても様々です。また多くの家がボイラーで沸かしたお湯を家中に回しているので真冬でも家の中はぽかぽかです。以前英国人は傘をささずに濡れながら歩いていると書きましたが、家に入ればすぐに乾くこともその一因かもしれません。

それから英国人の家に対する情熱はかなりのものがありDIYをトライする人も多くいます。一方で何か不具合が生じてもなかなか修理に来てもらえない事情もあるようで、ひどい時は数週間も待たされるようです。日本人の多くは日系の不動産家を介して家を借りることが圧倒的なようですが、家の修理は大家の責任ですので、何か問題が生じた場合(大家次第ですが)あまりの対応の遅さにいらいらすることが結構あると聞いています。ただ現在では全てを自社物件(所有)とし日本人棟梁率いるビルダーグループを専属とした日系不動産屋があり人気となっています。私も(幸いなことに)この不動産屋所有の家を借りることができ、お陰様で何か問題が生じても日本と同じようにすぐに対応してもらっています。

一方、ロンドンの街自体は(公園のような管理が行き届いている場所を除いて)ごみが多く捨てられていることもあり必ずしもきれいとは言えません。国民性なのでしょうか、ごみをポイ捨てすることに罪悪感を感じていない人が結構多くいます。ただ私は上空から見るロンドンの町並みは非常に気に入っています。ヒースロー空港に着陸する航空機はロンドン市内を東から西に横断しますので、蛇行するテムズ川に沿ってロンドン塔、タワーブリッジ、ロンドンアイ、ビッグベンなどの代表的な建築物だけでなく渋いレンガ色の何とも言えないロンドンの街並みを拝むことができます。もし好天の時にロンドンを訪れる機会がありましたらぜひご覧ください。


―――ちょっと横道に―――

こちらの同僚から「世界一幸せな男は?」と質問されました。答えを聞くと「アメリカ人の所得があり、中国人のシェフを雇い、英国人の家に住み、日本人の妻を持つ男」だそうです。何かに書いてあったようですが、正に英国の家を象徴するかのような話でした。もちろん日本人の妻に関しても異論ありません---。

吉川くんの長野便り