添田慎二くん(31組)の仙台便り第4回です。


仙台だより(その4)

                               仙台市在住 元31組 添田 慎二

皆さん、明けましておめでとうございます。東京知道会の総会まであと一か月半ほどですね。当日まで風邪など引かないよう気をつけましょう。

私の仙台だよりも4回目ですが、昨年末はちょっと残念なできごとがありました。1225日、私もよく歩いているアーケード商店街「マーブルロードおおまち」を乗用車が暴走し、けが人がでました。やはり私が転勤する前の4月に、隣りあったアーケード街「クリスロード」でトラックが暴走する事件があったばかりです。25日夕刻、私は横浜の自宅から仙台に戻ってたまたま事件直後の現場付近を通りかかり、通行禁止のテープが張られ、パトカー、消防車が何台も出動しているのを見て、何事が起こったんだろうと思いました。しかし、これに気を取られる間もなく、JR羽越線の脱線事故の知らせが飛び込んできました。こちらは自分の仕事なので、情報収集、事故調査委員会の調査官や大臣の現地入りの受入れに追われました。私も防寒着に着替えて現地に出発する寸前でしたが、上司が行くことになり、仙台で後方支援に当たりました。

そんなこともありましたが、話はうってかわって東北での食生活についてお話ししたいと思います。仙台にはおいしいものがたくさんあります(というかあるらしいです)が、普段私は自炊生活で、そうグルメな日々を送っているわけではありません。昨秋にはスーパーで大きなさんまが安く手に入りましたが、これは首都圏に住む皆さんも同じだったでしょう。気仙沼や女川(おながわ)はさんま漁業の基地で、程近い仙台でも新鮮なものが入荷するので刺身やさんま寿司などもおいしいです。それと、鍋物に使うのか、つみれも良く売ってましたが、量が多すぎて一人暮らしの私には残念ながら買えませんでした。さんまは取れすぎて早々に漁が終わってしまいましたが、冬になってからは松島や石巻の牡蠣が出回っています。生をポン酢で食べるのもおいしいですが、そうたくさんは食べられないので、鍋にしてみると結構たくさんいけますね。

気仙沼は唐桑半島と大島に囲まれた穏やかな海の奥にある港町ですが、さんまだけでなく、良質のフカヒレを産することで有名です。中国でも「気仙沼」は高級フカヒレの代名詞のようです。気仙沼港から大島へわたるフェリー乗り場にちょっと古びた感じの乗船券売り場があり、この建物の右半分が小さな中華料理屋になっています(よく見ないとわかりません)が、ここのフカヒレラーメンはとてもおいしいです。フカヒレの姿煮が入っているわけではないのですが、細切れでフカヒレ、カニ、マグロなどの新鮮な材料がたっぷりと入っていてダシのうまみが出ており、量も多くて1200円。行くのが大変ですが、ついでがあれば食べる価値はありそうです。

仙台といえば牛たんという人が多いでしょう。米国産牛の輸入停止で店の数は激減し、値段も上がりました(今は定食で1600円ぐらいですが、以前はもっと安く1200円ぐらいだったらしい)。今回の輸入解禁でもたんの部分の充足率は5%なので、米国産についてはほとんど回復の見込みはありません。ですが、市内を歩けば、元祖といわれる「太助」や、「きすけ」、「伊達の牛たん」、最近人気のある「利久」など、今でもそこらじゅうに牛たん店はあります。私は、昨年11月に東京から来た先輩のリクエストで始めて仙台の牛たんを食べました。東京の牛たんと違って、分厚くて食べごたえがあり、テールスープもいい味でした。仙台に出張などで来て時間のない人でも、仙台駅3階の新幹線中央口の左を入っていくと「牛たん通り」「すし通り」という狭い廊下のようなところに店が並んでいて、乗車前に食べることも可能です。駅の中の小さな店ですが、牛たん屋もすし屋も一流店の出店で評判が高いです。

海鮮がうまい土地ではフランス料理やイタリア料理もきっとうまいはずですが、いい店があるかどうかが問題。仙台から電車で30分(快速なら15分)の本塩釜駅の近くに「シェ・ヌー」というフランス料理店があり、素敵な雰囲気のこぢんまりとした一軒家で地元の海・山の幸を使ったおいしい料理が食べられます。私は前菜と肉料理・魚料理が出る5000円のディナーを食べてみましたが、牡蠣やスズキや仙台牛のどれもがおいしく、美しく料理されていてしかもあっさりと食べられました。ワインも店独自に入手しているものもあり、楽しい店です。ただし、満席のことが多いので予約は必須ですね。あと、意外なものでおいしかったのは、仙台市内のイタリア料理店で食べた「ラ・フランスとゴルゴンゾーラのピザ」です。ラ・フランスは山形が主産地の洋梨であることはご存知のかたも多いでしょうが、薄切りのラ・フランスの間をゴルゴンゾーラチーズで埋め、更にくるみを散らして焼いたピザで、デザートではなく、食事の一部という位置付けでしたが、酸味のある果物と癖のあるチーズの相性が良く、ちょっと感激しました。

東北は日本酒もいいものがたくさんあります。東京では、出張者が仙台から買って帰ることが多いので宮城の「浦霞」「一ノ蔵」が有名ですが、青森の「田酒(でんしゅ)」、山形の「十四代(じゅうよんだい)」など各県ごとにおいしい日本酒が多数あります。高いものから安いものまでいろいろありますが、私は、普通に一升瓶で売っている二級酒などが結構おいしいと思います。前回、平泉に行った話をしましたが、その帰りに新幹線に乗り換えるため一ノ関駅で降りたついでに駅から歩いて10分ほどのところの「世嬉の一(せきのいち)酒造」が経営している「酒の民俗文化博物館」に行き、日本酒の伝統的な製造工程や道具の展示を見ました。見終わると隣の売店に行き、夕方で他に誰も客がいないせいもあって、店員のおばさんに勧められるまま、試飲に次ぐ試飲ぐいのみ一杯ずつでも、歩き疲れてすきっ腹のところへ飲むと相当酔っ払ってきました。結局おばさんの勧めた高い吟醸酒は味がすっきりし過ぎていて却下。やや黄色っぽくて濃い味の「原酒」(値段も安め)を買いました。すきっ腹で酔っ払った状態で仙台まで帰れないので更に隣接したレストランへ。日本酒の試飲でもう充分に酔っているはずが、やはりここで作った地ビール4種類の「試飲セット」を注文し、食事をして、乗り越さないように注意しながら機嫌よく仙台まで帰り着きました。


添田くんの仙台便り(第4回)